〜 解離性同一性障害の彼女と僕〜
 
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2010-3-18 親の呪縛というもの



多 重人格であるとか、記憶がとぎれとぎれだとか、幻覚幻聴があるだとか、そういったことよりもよっぽど重大な問題がある。

そ れは、生まれてから20年もの間、親から植え付けられたもの。親の呪縛というもの。

赤 ん坊や幼い子供にとって、親は神様のようなものだ。絶対的な存在だ。少し想像してみれば分かると思う。
そ んな神様である親に、おまえはいらない存在だと告げらる。日々そんな破壊的なメッセージを受け取る。自分を完全否定される。自分は自分でいてはいけない と思う。自分は価値のない存在なのだと思う。自分は居てはいけない存在なのだと思う。自分を殺して生きるしかなかった。

本 来、親は子供に愛情を注いでくれる存在だ。ただ彼女の親はそうではなかった。愛情は欠如し、夫婦仲も悪かった。彼女の父親は彼女を理由もなく殴った。彼 女の母親は彼女がいけないと言い、父親に彼女を殴らせた。彼女が親からもらったものは愛情ではなかった。ただ不満のはけ口にされた。

愛 情をくれない親。それに反して、当然愛情がほしい子供、彼女。愛情飢餓感が生まれる。愛情を求める。
親 は愛情をくれはしない。それでも親に求める。だから、親の期待するように行動する。親に服従する。親の言いなりになる。そこに自分の意志はない。幼い子供 の自然な欲望は全て抑圧される。自然な感情は全て排除される。

彼 女は親に愛される「いいコ」をひたすらに目指した。それが全てに優先した。親の期待する人間になろうとする。しかし、その親の要求する期待はあまりにも実 現不可能、非現実的。

幼 い子供が、ひたすらに多くの犠牲を伴って限界までがんばってがんばって、親の期待通りの子供になろうとする。実現はできない。怒られる。暴言を吐かれる。 存在を否定される。殴られる。

な ぜそうなったか?彼女は自分が「いいコ」でなかったからだと思う。悪いのは自分だと思う。親は悪くない。親が正しい。今でもそう思っている。



大 人になり、親元から離れる。
親 から解放されるか?いやされない。
む しろ大人になるにつれ事態は悪化する。根強く根強く植えつけられたものが、彼女を苦しめる。

親 の期待にこたえるため、自分の自然な感情も欲望も犠牲にしてきた。その代償は計り知れない。

い らない存在だと言われ続けた。20年言われ続けた。そうとしか思えない。自分には価値がないとしか思えない。生きるのが辛くなる。当然だ。

彼 女の心は今でも半分は実家にある。実家の台所に居るらしい。目の前に半透明のスクリーンのようなもののなかに実家の風景が常に映っている。今を生きれな い。現実を生きれない。過去を生きている。

食 事をする、寝る、歩く、扉を閉める、立つ、座る、全ての動作に制限がかかる。動作のひとつひとつをする度に、母親のヒステリーな言葉が彼女の耳には聞こえ る。それに服従する。その症状はここ数年でだいぶましになってはいるとは思うのだけれど。



2010-3-21 人を拒絶してしまう悪癖



自 分にとってとても大事な人に対して、自分の意志とは関係なく、ひどい態度をとり、突き放してしまう。
そ して縁を切ってしまう。

僕 も含めて、普通の人にはちょっと理解しにくいこの行動をどうしても彼女はとってしまうことがある。

お かげで彼女は人間関係において今まで大変に苦労してきたし、今でも苦労している。
彼 女自身直したくてもなかなか直せないでいる、直し方も分からないかなり困った問題だ。


こ の反射的悪癖のスイッチが入ると、相手に精神的ダメージを与えてしまうような嫌味な言葉がずらずら出てくる。またとんでもなく卑屈にもなる。その卑屈な言 葉もまた、相手には罪悪感のようななんとも嫌な感情を与えてしまう。

こ の状態のときの彼女は、全くといっていいほど自分をコントロールできていない。自分でも何を言っているのか分かっていない。勝手に口がしゃべっているよう な状態だ。何をしゃべったのかもろくに覚えていない。

逆 に相手の言葉もほとんど聞こえていない。だからたとえ相手が冷静に対処してもなかなか話にならない。しかも聞こえていないのに、悪い言葉だけには敏感に反 応して嫌味で卑屈な言葉を言い返してくる。

そ うやって大事な相手を突き放し、自分から離れるように仕向けて、自らを孤独へと孤独へと、破滅へと破滅へと追いやっていく。
自 分を傷つけ、相手まで傷つけてしまう悲しい反射行動だ。そうやって何人もの友達や恋人をなくしてきただろうと思う。

こ の拒絶行動の原因ははっきり分からないのだが、おそらくは「見捨てられ不安」的なことなんじゃないかと思う。
彼 女には親に捨てられた経験がある。

彼 女がたぶん中学が高校生だったころ、両親と祖父と祖母と暮らしていたのだが、両親が彼女をおいて家を出て行ってしまったのだ。

母 親に「私達出て行くから」と笑いながら言われて出て行かれたという話を、彼女はしばしばする。そのことは、意識を失うまで殴られたり、湯船にしずめられた りすることよりも、ずっと彼女にとってはトラウマなようだ。

考 え方によっては、彼女に対して最低の扱いをする両親が居なくなってむしろ彼女は嬉しいんじゃないかと思うかもしれないが、どうやらそうではない。

彼 女は殴られたりすることは自分が悪いと思っている。殴られるのは自分が悪いから。いいコでないから。そう思っていた。そう言い聞かされた。

だ から彼女は幼少期から、自分がいいコになって両親から愛されること、両親が自分に笑いかけてくれること、そのことだけに全てのエネルギーを注いでいたと思 う。

だ から彼女にとって両親が自分を見捨てて出て行ってしまったことは、本当に本当にとんでもないショックな大事件なんだ。


彼 女の拒絶行動はよく分からないところも多いけど、原因はたぶん、この無意識の底に抑圧されたであろう、バカでかい両親に見捨てられたというトラウマが刺激 されることで起こる現象なんだと思う。

だ から友達や恋人に、ほんの少しでも、見捨てられるのではないか、と感じさせられるような態度や行動を察知すると、拒絶スイッチが入ってしまう。

ち なみに僕はこの拒絶スイッチを幾度となく押している(笑)で、その経験から不完全ながら学んだこのときの対処法は、

彼 女の「どうせあなたは私から離れていくんでしょう?」(そんなストレートな言い方ではないが)の類の問いに対しては、全て強くNO!の姿勢、俺は離れてい かないの言葉をたたきつける。
そ の他の嫌味や攻撃は、口が勝手にしゃべっていることだと思って我慢する。(これがなかなかできない)

そ う、なかなかできないので、カウンセラーと3人で相談までしてみつけた対処法が、
「お 互い1時間話すのやめよう。喋るの禁止。それでお互い頭を冷やして1時間後にまた話し合おう。」

こ れです!でも実は実際のところこの方法はいまだ実践したことがありません。そういう約束事が出来たことで、喧嘩自体が減ったのかなとも思います。

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